僕は純ドメで留学経験無しの普通の日本人だが、仕事の関係で、海外のメンバーと英語で話さなきゃいけない時がある。
別に英語がペラペラ話せるなんてことは全く無い。
発音は格好悪いカタカナ英語で、文法もめちゃくちゃなんだが、親切なメンバーが頑張って僕の言うことを理解しようとしてくれるし、逆に彼らが話すときは、簡単な言い回しでゆっくり伝えてくれるので、なんとかなっているだけだ。
普通の日本人は格好悪い発音を恥ずかしがって英語を話したがらない(個人的にはいい年した大人がモゾモゾ恥ずかしがって、いつまでも自分を改善しないでいる方が恥ずかしいと思うんだが…)。
だから、僕の発音が酷すぎるとはいえ、少し英語が話せるだけで、他の大多数の日本人と差別化できる。
そして、英語は世界共通のインターフェースのようなもので、英語が話せれば、英語圏以外のあらゆる国の人とも話せるので、めちゃくちゃ便利だな〜とそのメリットをひしひしと感じている。
さて、話は少し変わるが、僕は勉強が嫌いだ。
学校での勉強は、どちらかというと得意だったし、受験期は一生懸命やっていた。
では、なぜ勉強が嫌いなのかというと、大人に騙されたという被害者意識があるからだ。
社会人になった今だから分かるが、学校の勉強なんて、ほとんど社会では役に立たないものだった。
僕達が必死になって取り組んだ、「テスト」という儀式は、「誰か」が「偉い人」に「作れ」と言われて作った、「パズル」のようなもので、アレができたからといって人間的に優れてるわけじゃないし、もちろん仕事が出来るわけじゃない。
学生時代にテストが出来ないやつは努力が出来ないやつ、みたいに、めちゃくちゃ上から目線で指導してきた先生達は、社会のことなんて何も分かってなかったか、実は自分たちも「偉い人」に言われて必死に進学率をあげようとしていただけだったのだ。
誰も「どういう教育が本当に子供のためになるのか」という本質を考えて教育をしてるわけじゃないって気づいてからは、あんまり座学に身が入らなくなった。
そんなわけで、新卒の就活のときも、転職のときも、僕はTOEICを受ける気が出なかった。
「本当の英語力なんて、テストで測れるもんじゃない。TOEICなんて英語が話せるかどうかとは関係ない。だって俺はセンター試験で英語9割とったけど、全然英語喋れないじゃないか。」とか思っていた。
そんな感じで嫌なことから逃げる言い訳をしていたわけだが、ある日、TOEICで600点取らないと昇進出来ないことを知った。
そして日程を調べてびっくりしたのが、3週間後の試験に今すぐ申し込んで600点とらないと、今年の評価にTOEICの結果が考慮されないらしい!
今までTOEICの勉強は一秒もしたことがない。でも昇進はしたい(お給料もほしい)。
ということで、僕は数年ぶりに英語の勉強をすることになった。
600点がどんな難易度なのかよくわからない。てか満点が何点なのかも知らない。
とにかく時間もない。やるしかない。
時間がない中で点数を上げるにはどうしたらいいのか?
これは受験勉強から学んだ反省なのだが、参考書を読んでもテストの点数は上がらない。
教科書を読んで理解した気になっても、実際のテストではペンが動かない経験を何度もしたことがある。
そこで僕は「点数を上げるための勉強は模擬テストである」という仮説を立てた。
「練習は本番のように、本番は練習のように」という名言がある。
本番の形式に近い模擬テストを、本番と同じ時間をとって、その時間内に解くということを毎日やる。
TOEICに出る単語集を暗記したり、リスニングとライティングに分けて勉強したり、Partごとに分けて対策したりはしない。
出来るだけ本番に近い状態を作り出し、それを毎日「経験」する。
繰り返す問題は同じ問題でも良い。
なぜこのような仮説を立てたかというと、人の記憶に関する本を読んだことがあるからだ。
人には忘却曲線というものがあり、モノは覚えるのではなく忘れるのだ。
生活の中で登場する回数が多いモノほど忘れるまでの時間が長くなる。
だから、同じ問題で良いから何回も解くことで、その問題は自分の生活にとって必要不可欠なモノと脳が認識して、記憶に定着するし、その問題形式に脳が慣れる…らしい。
あくま仮説だが、検証する時間がない。
時間がないのだから正々堂々勉強するのではなく脳をハックする方向で作戦を立てるしかない。
そして、とりあえず本屋に行った。
本屋にはTOEIC対策の本が沢山ある。
TOEICに出る単語とか知らないし、リスニングも自信ない。
いろんな本に目移りしてしまうが、どうせ全部やる時間もないので、当初の予定通り3回分の模試が入ってる本を一冊だけ買った。
僕が実施した勉強は以下の通り。
1週間を1スプリントとして、1スプリント内で3回分の模試を実施する。
それを3週間繰り返す。
具体的にはこんな感じである。
1日目…第1回模試を解く
2日目…第1回模試の採点・復習をする
3日目…第2回模試を解く
4日目…第2回模試の採点・復習をする
5日目…第3回模試を解く
6日目…第3回模試の採点・復習をする
7日目…お休み
これを1スプリントとして3週間同じことを繰り返す。
1週目は、リスニングで何言っているのか聞き取れんし、単語も分からないから長文問題に何が書いてあるか分からんし、TOEICの問題形式にも慣れなくて要領よく解けないし、時間も足りなくて、散々な結果だった。
2週目からはかなり改善されて、3週目はどの模試もほぼ満点が取れるようになった。
毎日同じ問題をやっているんだから当たり前である。
いざ、テスト本番の日。
テストが始まっても、不思議と緊張はしなかった。
毎日何度もやってたので、パターンはわかってる。時間配分も分かってる。
あっという間にテストが終わった。
電子採点だったのですぐに結果が出た。
結果は…915点!!!
え?
流石にちょっとビックリした。
みんな、「俺800点いったぜ」とか、「600点行かなかった…orz」とか、「700点めざしてる!」とか言ってなかったっけ?
900点台って難しいんじゃないの?
俺、3週間しかやってないんだけど…
600点が昇進の基準って低すぎないか…?
むしろこんな簡単なものがどうやったら700点台になるのかわからない…
もしかしてTOEICには何種類かあって、自分は間違えて違うテスト受けたのか…?
結局、僕の点数は無事、正式に社内のシステムに登録されることとなった。
今回の経験から学んだことはいくつかある。
まず、僕の勉強法は正しかったということだ。
つまり、テストの点数を上げるためには、授業を聞いたり、教科書を読んだりするのはほぼ意味がなく、ひたすら本番に近い問題を、できるだけ本番に近い条件で、何度も解くことが一番てっとり速いということ。
また、みんな「TOEIC大変、大変」とか言っているが、本当は、本一冊やり切るということすらやってなかっただけなんじゃないか、ということ。
そして、TOEIC900点は別にすごいことではないということ。
TOEIC900点取った人が、仕事で英語を使えるかと問われると、やっぱり全然そんなことはないと思う。
厳しい条件の下で、科学的理論をもとに仮説を立てて検証し、それがうまくいった、という経験が積めたのは良いことだった。
「君がやっている勉強法…とりあえずがむしゃらに取り組んで良い結果が出ることを願うというのは…そういうのは頑張っているとは言わないんだよ。」と、受験期の自分に言いたい。